君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「おまえ、」
「どうしよう、創。
俺、自分は間違ってないと思ってた。茜は女の子にならなきゃ幸せになれないんだって、だから女の子にしてあげなくちゃってそう思ったんだ。
傷ついたとしても、それは仕方がないんだって、通過点なんだって、そう思ってた、なのに、どうしたらいいんだろう。俺、」
まるで小さな子どものように、垂れ流し吐き出される甘い声が許せなくて、おれはだんと、コンクリートの壁を強く殴っていた。
拳が摺れて、血が出たような熱い感覚を感じながら。
おれはタケの胸倉を掴んで半身を起こさせた。顔を覆っていた腕が外れて、その下にあったものが明らかになる。
その目はひどく暗く、ぼんやりとした色を宿していた。