君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 茜は、男として生きることを、決意したんだ。
 あの、決別の日に。

 そうして今までずっと生きてきた。
 おれの隣で、「親友」として、ずっと生きてきていたんだ。なのになんで。


「なんでお前が、ぶちこわすんだ!」


 それは叫びだった。
 怒りなのか焦燥なのか、悲しみなのか。

 もうなんだか分からないほどに、頭も身体もヒートアップしているような気がしてしょうがない。 

 なんで、タケはこんなまっすぐに茜を「好き」だといえるのだろう。それがひどく悔しかった。うらやましかった。


< 320 / 395 >

この作品をシェア

pagetop