君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
おれは、その気持ちを押し殺すために、気付かないふりをするために、わざわざ茜から離れたって言うのに。
なんで、それすらもタケに台無しにされなきゃいけないんだ。
やめてくれ。茜を取るな。傷つけるな。
「でも、俺は茜が好きだった! どうしようもないぐらい、ずっとずっと好きだったんだよ!
そもそも、創が最初に逃げたんじゃないか! 茜の気持ちも何もかも、全部知ってたくせに、創が逃げ出したんじゃないか!」
茜が、創のことどんな目で見ていたか、知らないの?
俺は、だから。茜は女なんだって、思うのに。
そう続いたタケの言葉を聞きたくなくて、おれは衝動的にタケの顔を殴っていた。
けほっと咽こみながらも、タケはおれから目をはずさなかった。