君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
なんでそんなことを仮にも創の彼女が言うのだろうと思って、彼女自身も、創の一番では自分がないことに気付いているのかもしれないと俺は思い当たって。
ちらつく創の曖昧な、それでいて穏やかな笑顔に半ば八つ当たりだと思いながら腹が立った。
美羽は、少女らしい微笑を浮かべたまま、言葉をつむぐ。その大きな瞳は、俺を見ず。彼女の手元のティーカップの水面を見つめていた。
「……創がさ、茜のこと好きだったら、あんたはどうするわけ?
創とわかれて、応援でもするの? そのためにこんなとこまできたのかよ」
「あたしは! ……信じられないかもしれないけど、本当に創のためになることがしたいだけなの」
「信じらんない」