君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 茜は、女だから。でもそうじゃないことになっていて。
 創はきっと普通から外れるのをひどく恐れるから、だから茜が男であり続ける限り、それだけが理由じゃないとしても、でもその選択肢はとらないと俺は思っていた。

 それをこの子は分かっているのかなと思う。

 創は、―――俺は、そんな、良い人なんかじゃ、ない。
 どれだけ取り繕ったとしても、その一番底にあるのは、自分の願望だ。この子だって、きっとそう。すべてが創のためだなんてあるわけがない。


「……そんなこと、好きになったら、きっと関係ないんだよ。だって、あたしは創が茜くんを好きでも、創が好きでしょうがないんだもん」

「……俺は、茜が好きだよ」

「知ってる。創もそうだよ」

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