君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

「タケくん、この間のライブのときからずっと、なんだかちょっと迷子の子どもみたいな、そんな目をしてるから、勝手だとは思ったけど、心配もしたんだよ」

「―――――なんで」

「創が、タケくんのこともすごく、大切にしてるから」


 にっこりと、笑う彼女に力が抜けて、俺はただ俯いて、足元を見つめた。

 分かってる、そんなこと。
 でももう、それは俺が、―――切り捨ててしまった、ものだ。

 ここはあたしがおごったげる。もう帰るけど、タケくんは好きなときに帰りなよ、会計しとくから。
 そう言って立ち上がる美羽に何も言えず、彼女が立ち去るのを遠ざかる足音だけで知る。

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