君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
それはきっと、ひどく残酷だ。
そんなこと、俺が言う権利ないなんて、分かってはいるけれど。
茜の瞳を見るのが怖くて、俺は茜に縋りつくように身を埋めた。
戸惑うように俺の背を触れていた茜の指先は、結局俺の毛先に行き着いた。
触れる温度は、昔から変わらない、以前と同じ。
小さな弟をなだめるような、それのまま。
何で俺はそんな指先に欲情してしまうんだろうと悲しくなった。そうでさえなければ、俺は―――。
「どうしたんだよ、なんか悲しいことでもあったのか?」
落ちてきたのは、嫌になるぐらい甘くやさしい音だった。