君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
リビングに上がって、最初に言葉を発したのは俺で。にこっと、変わらず笑う茜の顔が見れずに、焦点を茜から思わず反らした。
あの日と同じ、リビングで。
俺はまた、茜を傷つけるのだろうか。変わらない、茜の家の匂いは、俺に罪悪感を植え付けるのと同時に、焦燥感を煽らせるんだ。ずっと。
崩れるようにソファに座り込んだ俺から、距離をとるように離れて立つ茜に俺は告げた。
「じゃあさ、キスしてよ、茜から俺に」
「……なんでだよ」
平静を装ったつもりなんだろう、平坦な茜の声が届いた。