君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
俺を見下ろす茜の瞳が嫌に無表情で、無機質な香りをはらんでいて。
呑まれるように俺は口をつぐんだ。
でもそれは一瞬で、俺はわきあがる欲望を噛み砕けず、そのまま言葉をつむぐ。
「……じゃあ、もし創が女の子に戻って、って言ったら?
そうだとしても茜は同じ返事を返すの?」
「そうがそんなこと言うわけないだろ」
間髪いれずに返ってくる言葉はどこか痛々しく俺の中に落ちていって。
見上げた茜の顔は、泣きそうに俺には思えた。
「……もしも、の仮定の話なんだけどな」
「―――そんなこと、もしそうが言ったとしても関係ねぇよ」