君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「離せって言ってるだろ!」
「創は、茜を女の子としてなんて、きっとずっと見ないよ。それだったら、俺にくれたっていいじゃんか! 俺なら、茜をっ……」
茜が激昂するのと、ほぼ同時に俺も声を荒げていた。
ぐいっと捕まえていた手を引けば、たたらを踏んだ茜の身体は俺の中にあっさり落ちてきた。
きゅっと抱きしめれば、あの日と同じ柔らかい茜の匂いがした。
「……勝手だよ、お前」
「だったら、俺をこの家に入れないでよ、俺を拒絶して」
出来ないとわかっていてそう告げる俺はきっと、すごく卑怯だ。
でもそうしてくれない茜の弱さは、ひどく甘美で、そして怖い。