君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―


「……俺は、お前の『女』にはなれないんだぞ」


 腕の中で、茜の肢体は細かく、けれど確かに震えていた。
 なのに茜の言葉はしっかりと重たい音をはらんでいて。


「……でも、茜は女の子なんだよ」

「――――くどいぞ、タケ」  

「……俺は、茜が好きだよ。本当に、好きなんだ」 


 それを免罪符にしては駄目だと心のどこかで訴える声が聞こえる。

 それが俺の中にある罪悪感なのか、蘇る創の声なのか、もうよく分からなかったけれど。ごまかすように、抱きしめたまま俺は茜に口付けた。

< 365 / 395 >

この作品をシェア

pagetop