君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
口をついて出た呟きはまったくの無意識で。
飛び出した内容に俺は自分でも驚いた。
茜も一瞬、瞳を大きく見開いて。そして視線をさまよわせて、結局俺を見ないまま「ごめんな」と確かにそう言った。
「……なんで茜が謝るんだよ」
「俺さ、そうのこともすげぇ大事なんだけど、タケのことも大事なんだ。だから3人で居たいなぁなんて、ずっとそう思ってた。けど、それがお前を苦しめてたのかな」
場違いなほど明るい茜の声はどこか滑稽で、それでいてとても優しくて。
「ごめんな、タケ」
俺の気持ちに応えられないことがなのか。
女の子としての茜に戻れないことがなのか。