君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「あいつ、しょうがねぇなぁ」
「……そうだね」
「まぁ、たぶん今日のはバンドの打ち合わせが長引いてたからだと思うけど」
同じくタケに気がついていたらしい茜が、小さく顔だけ振り向かせてひそやかな声を落とす。
ちらりと視線を走らせた担任に気がついて、すぐに茜は視線を教卓に戻していたけれど。
そんな、何事もなかったような柔らかな顔で、タケのことを話すな、なんて。
茜が元気なことを喜ばなきゃ、いけなくて。
安心してやらなきゃいけないんだろうけど。
ぱきと軽い音がしたと思ったら、隣の席の女子が驚いた顔をしておれの手元を見ていた。
その視線をたどれば、おれの右手の中で無意識にもてあそんでいた華奢なシャーペンが真っ二つに折れていた。