君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「―――ごめん。受験勉強でちょっといらいらしてただけ。茜は悪くないよ」
「……そう、」
「ごめんな、八つ当たりだ」
何とか取り繕った普段どおりの『声』がどこまで様になっていたのかは分からなかったけれど。茜もぎこちなく笑顔を作った。
そうすれば、おれたちの関係が壊れないことは、きっと茜も良く分かってた。
「―――ごめん、ちょっと頭冷やしてくるわ。おれ屋上行くし、先生には適当にいっといってもらってもいい?」
「ああ分かった。俺も後で行っていいか」
「……ありがと。でもごめん。喧嘩したくないから、今日はここでバイバイにしよ? おれ、いらいらしちゃってるからさ。茜もこの後、バイトあるだろ?」