君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「…………分かった」
ブレザーを掴む茜の手を見れば、力を込めすぎたその指先は真っ白になっていて。
それでも。ぎこちない硬さで茜は手を離した。
おれはどうしてもそれ以上茜が見れなくて。きっとみたらもっとひどいことを言ってしまいそうで。あるいは、自身の誓いを破りそうで。
おれはそのまま背を向けた。思えば、茜を振り払ったのなんて、たぶんおれの人生の中で初めてで。
ずっと。茜と生きてきた。
ずっと、ずっとだ。
そしてそれはこれからも。
隣で。触れ合わなくていい。ただ笑顔が一番近くで見れる位置で、ずっと。茜の隣に居たかったんだ。
それの何が悪かったんだ。