君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
「ふざけるなって、言ってるんだ」
「……創、」
「いい加減にしてくれよ、おまえ! なんでだよ……っ、なんでっ」
激昂を押し殺すように、くしゃっと右手で顔を覆って俯く。
それでも感情は留められず、おれはそのまま音を吐き出した。
「茜を無理やり抱いといてっ、なんで、そんな顔でそんなことが言えるんだ……っ!」
おれはずっと、茜を男だと思って接してきていた。
それでよかった。それが正しいと、思ってた。
なのになんで、タケはそれを覆そうとするんだ。茜をおれの傍から、連れ去ろうとする。
なのになんで、なんで、そんなすっきりとした顔でおれににこやかに話しかけるんだ。
おれのどこまでも落ちていこうとする思考を引き上げたのは、タケのかすれた声だった。信じられないものをみたようにそれは響いた。