君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―





「…………茜」

「――――え?」


 覆っていた手をどけて、顔を上げれば、凍りついた表情のタケが眼に入った。その凝視される先はおれの後ろ。屋上の出入口だ。

 どくんと、嫌な音を立ててはねた心臓の期待を裏切れば言いと思いながら、俺はぎこちなく首をめぐらせた。

 そこにあったのは――。


「――――茜、」

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