約束のエンゲージリング
「何言ってんだ。お前は今も昔も俺らの家族だろうが。寧ろお前が帰ってくれば沙羅も由羅も喜ぶ。」
「うん、、でも私も〝自分の家族〟を作りたいなって。年齢を重ねる毎に思うんだ。今まではその相手はマサさんがいいって思ってたけど、これからは違う人にも目を向けて行かなきゃ、私一生独り身だよ。その為の一歩でもあるの。仕事場も帰る場所も一緒じゃ、、ね?」
〝戻ってこい〝というその気持ちは嬉しい。
でもそれは私にとっては甘えでしかなくて、ここで自分の力で前に進まなきゃ駄目な気がした。
真剣な表情で兄を見つめるとその真意が伝わったのか、静かにコーヒーに口を付けた。
「、、そうか、分かった。ただ引っ越す部屋は俺と沙羅でいくつか目星をつけとく。候補がいくつか見つかったら連絡するからそれまで待っとけよ。」
「本当に何から何までありがと、孝兄。じゃあそうさせてもらうね?」
丁度会話が終わった頃に浴室から沙羅姉の声がした。
「千佳〜お風呂上がったよー!!」
「はーいっ。じゃあ先にお風呂もらうね?」
そう声を掛けてリビングから出ようとした時、背後から孝兄が呟いた。