約束のエンゲージリング
花を包み終え、お客様に声を掛けようと視線を向けるとすぐさま目が合った。
「すみませんっ、、お待たせ致しました。お急ぎだったですね。」
「いえ、全然ですよ。つい見惚れていたんです。綺麗な人って仕草もとても綺麗だから。本当に貴方はお花屋さんがとてもよく似合う。」
「えっ、、!?あ、ありがとうございます、、。花は小さい頃から好きなのでお世辞でも嬉しいです。」
最近、こういうお世辞を言われる事が増えた。
前から言われることはあったが、ここ最近は相手から熱量を感じる。
彼一筋だった私は、彼以外の男性に目を向けた事が無かった。
でもこれからはそれじゃ駄目だと思う。
彼から離れる為にも、完全に妹になる為にももっと他の男性にも目を向けなくては。
休みが平日で週に1、あるかないかの私には出会いが全くなく、あるとするならこうして店に訪れるお客さんくらいだ。
じっとお客様を見つめる。
年齢は私よりも少し年上くらいだ。
顔立ちはとても綺麗で所謂イケメン。
それになによりお母さんの退院にお花を飾ろうというその優しさがとても素敵だ。
こんな素敵な人を好きになれたらいいのにとボンヤリ見つめているとお客様が少し頬を染めた。