約束のエンゲージリング
「あのっ、、差し支えなければ、、『岩田さん。悪いけど急ぎで配送をお願いしてもいいかな。』
お客さんが何か言いかけた所で作業場から彼の大きめの声が響いた為、お客様の声が最後まで聞こえなかった。
先程まで作業場にいた彼がいつのまにか店まで出てきていてお客様と私との間に遮るように立っている。
『じゃあ岩田さんお願いね?、、お客様。お待たせ致しました!こちらキープフラワーと言って花瓶に一緒に入れますと綺麗に長持ちします液もお付けしておきますね?あとはオマケにかすみ草もどうぞ。』
「あ、ありがとうございます、、。」
急ぎだと言われてしまえば早く向かわなくてはと接客の途中ではあったが、お客様に小さく会釈をして店に背を向けた。
テーブルに置いてあった花束と配達先の住所、それからゼンリンの地図を持って車へと急いだ。
目的地に向かう途中の信号待ちで何気なく確認した配達表の配送時間は〝指定なし〟となっている事に気付いた。
「あれ、、?これ本当に急ぎ?」
すぐ様信号は青に変わり、慌てて進行方向に視線を向けてハンドルを握った。
それからは運が良い事に信号機に捕まることなく目的地へと到着した。