約束のエンゲージリング
店に戻りながら思い浮かべるのは彼の顔。
私に変わって笑って接客していたが、少し違和感のある表情だった。
作り笑顔みたいな、、少し威圧的な笑顔。
他の人には分からないであろう小さな違いだけど、私には分かる。
少し怒っていたようにも感じた。
その意味を考えても全然分からない。
接客が長かった?
それとも花言葉みたいなうんちくを話したのがマズかったのかな。
特に急ぎじゃなかった配達を理由に私を店内から追い出したようだった。
きっと何かがいけなかったんだ。
しばらく運転していると店に到着し、彼の機嫌が治っていることを願って作業場のドアを開けた。
、、が、作業場に彼の姿はなくキョロキョロと探していると店内で接客している彼を発見した。
横顔を見る限り、いつも通りのようだ。
作業場のテーブルには〝千佳へ〟というメモが置いてあり、それに目を通して彼の指示通りの作業を始めた。
書いてあった内容はウエディングブーケのパーツ作りをしておいて欲しいとの事。
この前来店した可愛らしいお客様が自分の結婚式に使うブーケをうちで購入したいと、デザインや色味、使いたい花材を念入りに話し合った。
その結婚式も明日と迫っていた。