約束のエンゲージリング
ブーケを作るにはただ花を束ねるだけではなく、前もって準備しておく作業が多い。
ワイヤリングが必要や花材は今のうちから準備をしておかないと間に合わない。
お客様と話し合った時のメモを取り出し、デザインの最終確認とそれに必要な花材をストッカーから取り出しワイヤリングをしていく。
こういうちまちまとした作業は手先が器用な私の方が得意で、ブーケの注文が入ると自然と私の仕事になっていった。
それに同じ女性としてやっぱり結婚式は憧れの一大イベントなだけについ、いつも以上に力が入る。
自分が作ったブーケを受け取った時の新婦の幸せそうな顔を思い浮かべながら作業に没頭する。
『相変わらず上手いもんだね〜。俺が教えたとは思えないくらいだ。本当に千佳は才能があるよ。色彩感覚もいいからね。』
急に降ってきた彼の声に驚いて顔をあげると、隣でアレンジメントを作っている彼が感心した表情でこちらを見ていた。
「わ!びっくりした。いつのまにそこに居たの?気付かなかったよ。」
『結構前から居たけどね?凄い集中力だったから気付かなかったんでしょ。それだけ丁寧に作ってくれたんだって新婦さんも知ったら喜ぶよ。』
「そうだと嬉しいな。」