約束のエンゲージリング
その熱を下げようとブンブンと顔を振り雑念を追い払ってから作業の続きを始めた。
作業を始めれば直ぐに集中力が戻ってきてサクサクとワイヤリングしていく。
最後の1つをワイヤリングし終えて盛大な溜め息をつくとその溜め息が木霊する。
人の気配もなく静まりかえっている作業場。
あれから1時間以上も作業を続けていたらしく、さすがに彼も帰宅したようだった。
ワイヤリングした花材を傷が入らないように丁寧に箱に並べて、温度調節してあるストッカーへと片付ける。
「よしっ!帰ろう。」
独り言を呟いてから休憩所のロッカーにエプロンを掛け、鞄を取りに行く。
そして戸締りの確認をしてから作業場の電気を消し、しっかりと警備をしてから外に出ると見覚えのある車が目に付いた。
「あれ、、あの車って、、、。」
小さく呟くと帰ったと思っていた人物が運転席から降りて来た。
そして手を挙げた。
『千佳、お疲れ。』
「マサ兄、どうして?もう帰ったんじゃぁ、、?」
こちらへ向かってくる彼にこちらも駆け寄りながら声を掛ける。