約束のエンゲージリング
「余計なお節介かもしれないが、この旅行がキッカケになればいいと俺は思ってる。」
暫く無言で背を向けていたマサが目を細めて振り返る。
『、、キッカケって何の?孝の言ってる意味が分からないよ。』
「自覚がないならその旅行で自覚して来いよ。でも、、本当は気づいてるんだろ?だからいつも必要以上に〝妹〟だと言葉に出してそう思い込もうとする。」
『ははっ。本当に孝は面白いこと言うね?羽を伸ばすいい機会だから旅行は楽しんでくるよ。じゃあ沙羅ちゃんにも宜しく言っておいて。お邪魔しました。』
呆れたように笑いながら出て行ったマサ。
目を合わせることなく、、。
それは本人は気づいてない癖だ。
幼い頃からつるんできた俺だから分かる癖。
心配事や隠し事があるといつも以上に笑って目を合わせない。
今日のマサはそれだった。
相手が俺だから余計にそうだったのかもしれない。
本人達次第で報われる想いも自ら目を晒す。
必死になって手に入れてもいつか失う事を恐れて手を伸ばす事さえしない。
両親を失い、不安に押し潰されそうになった時に一番に支えてくれた親友。
その親友の戸惑いや不安を払拭させてやる事も俺には出来ないのがもどかしい。