約束のエンゲージリング


満面の笑みを浮かべながら花束を抱き抱えた女性に頭を下げてドアを閉めた。






お客様の嬉しそうな表情は本当に気持ちを温かくしてくれる。

車に乗り込み、エンジンを掛けても先程の嬉しそうなお客様の表情が頭に浮かんでつい笑みが溢れた。





行きと違って帰りはあっという間にお店に到着して、作業場に入ると彼が忙しそうに花束を作っていた。

配達から帰ってきた私に気づいた彼は、優しく微笑む。









『岩田さん、配達お疲れ様。帰ってきて早々で悪いんだけどホテルに花束の配達に行ってくるからまた店番お願いしてもいいかな?』

「え?ホテルの配達なら私がいくよ?だからマサさんはそのままお店にいていいよ。」

『いや、数が多いから俺が行くよ。じゃあ後は宜しく。』

「あっ、、、。」







私の返事も聞かずに大きい片手に3つずつ、計6つの花束を抱えて作業場を飛び出して行ってしまった。


確かに私なら片手に1つずつしか持てない為、車と会場を何度も往復する事になっただろうがそれが仕事ならば苦にならない。

でもきっと彼の事だ。




私に配慮しての事だと思う。

そういうスマートな優しさが彼の魅力なのだ。




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