約束のエンゲージリング
目を閉じて何度も大きく深呼吸をしていると背後からクスクスと笑いながら荷物を抱えた彼が向かってきた。
『ははっ確かにこれだけ空気が良いと深呼吸したくなるよね。』
「もう!マサ兄ってば馬鹿にして〜〜っ、、!」
『してないしてない。可愛いなって思っただけだからそんなに怒らないの。さ、早くチェックインして寛ごう?』
「っ、、、!」
つい最近振った相手にも〝可愛い〟なんて台詞もサラッと言っちゃう彼は本当に嫌な男。
私から告白された事も忘れてるんじゃないかって思ってしまう。
でもその方がいいのかもしれない。
ギクシャクされるよりも全然いい。
折角の旅行だし、楽しまなきゃ損だ。
そう思って気持ちを切り替えて彼の手を強めに引いた。
「そうだねっ!行こマサ兄!!!温泉旅館なんて来るの初めてだから楽しみ〜〜!」
『っ、、そんなに慌てないの。ちゃんと前向いて歩きなさい。』
一瞬戸惑った表情をした彼だったが、直ぐに困った様に笑って後をついて来てくれる。
2人でそのまま旅館に入って奥の受付の方へと向かう。