約束のエンゲージリング
「え?でも、、。」
確かに露天風呂付きだけど、てっきり彼が入るものだと思っていただけに彼の発言に驚いて言葉を詰まらせる。
長時間の運転に日々の仕事で私なんかよりもきっと疲れてるだろう彼の方に部屋の露天風呂をゆっくりと堪能して欲しい。
私の代わりに部屋を出て行こうとする彼の腕を掴んで笑顔で声を掛けた。
「ううん。部屋の露天風呂はマサさんが使って?私が本館の方に行くよ。こんな機会滅多にないんだからマサさんが使うべきだよ。若女将も部屋の露天風呂は是非って言ってたし!!ね?」
暫くそのまま黙り込んだ彼だったが、ゆっくりと振り返り冷たい表情をこちらに向け小さく呟いた。
『、、今日は本当に聞き分けが悪いね?』
その言葉にカッとなってつい声を荒げる。
「っ、、なんでそんなに怒ってるの?!マサさんこそ今日変だよ!?いつものマサさんじゃないっ!!私はただマサさんにっ、、!」
『俺に、、何?もし俺がいつもの俺じゃないんだもしたら、それは完全に千佳の所為だね。癒されに来た筈なのに、ここに来てから疲れてどうしようもない。』
ため息混じりにそんな言葉を言われたら、いくら私でも傷つく。