約束のエンゲージリング



どうしてそんな表情してるの、、?






そんな顔、妹の私に向ける表情じゃない。


彼の視線から逃げるように顔を背けようとするが両手で顔を掴まれ、逸らすことすら許されない。






それが悔しくて溢れそうになる涙を必死に堪えて彼を睨み付けると更に柔らかい声で力強く呟いた。





『千佳、お願いだから。言うことを聞いて?』










そんな風にお願いされたら、とてもじゃないけど嫌だとは言えない。

彼は本当に狡い。




最終的に私がわがままを言っているように話をもっていって自分の意見を押し通す。


そういう所は唯一彼の嫌いな所なのに、そんな彼になんだかんだで毎回押し負けてしまう自分にも呆れてしまう。

これが惚れた弱みというヤツなのだろう。













「、、分かった。私がここの露天風呂使うから、、もう手離して。」



少し冷たく言い放つと悲しそうな笑みを浮かべながらゆっくりと手を離した。





『ありがとう。じゃあ俺は本館に行ってくるから千佳もゆっくりね。』


素早く風呂の荷物を持つと一度もこちらを見ずに部屋から出て行った彼。




そんな姿にモヤモヤする。


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