約束のエンゲージリング
だから敢えての提案だ。
そんなやすい挑発には絶対に乗らない。
その場の自分だけの身勝手な感情だけで今までの関係を壊したりはしない。
これまでだって何度も乗り越えてきた。
だから今回も大丈夫だと自分に強く言い聞かせて千佳が居るであろう部屋の奥へと向かう。
ようやく千佳を見つけ、もう一度声を掛けようとした瞬間、思わず目を見開いた。
『千佳、、っ?!』
「あ!マサさんおかえりなさーいっ!!遅かったねぇ?あんまりにも遅いから先に独りで飲んでましたぁー。あはっ!!」
『っ、、、!』
目の前に広がる光景に絶句した。
テーブルにはミニボトルとはいえ、大量の空になった日本酒のビンが散乱している。
そして綺麗に着付けてあった筈の浴衣は首元まではだけ、顔から首、そして華奢な肩までほんのり赤く染まった肌。
部屋に戻った自分と目が合うと嬉しそうにふにゃりと表情を和らげ微笑んだ。
咄嗟に目を晒すが彼女の妖艶な姿が脳内に焼き付いて離れない。
このままではマズイと思い、距離を取ろうと後ろへ下がるとそれに気づいた千佳がムッとした表情をして立ち上がった。
そしてグッと両手で腕を引かれた。