約束のエンゲージリング
この先自分から彼女が離れていくような事になったら、まさに天国から地獄。
これはもう立ち直れないなと苦笑いを浮かべる。
一度この温もりを手にしてしまえば、もう知らなかった頃には戻れない。
目を閉じては直ぐに目を開けて、胸の中でスヤスヤと眠る彼女の存在を確認してしまう。
やはり何処か現実味がせずに、こうなった事が未だに信じられない。
またゆっくりと目を閉じてこれからの事を考えた。
自分とは違い、若い彼女にはこれからもまだまだいい出逢いが山のようにあるだろう。
そんな彼女の足枷だけには絶対になりたくない。
だからもし彼女から自ら離れていくような事があるならば、その時は笑顔でその手を離そう。
それが唯一、彼女にしてあげられる事なのだと自分に言い聞かせた。
決心が鈍らないようにと彼女の頬に誓いのキスを落とす。
君が離れていくその時まで、全力で彼女を愛し続けるのだと心に誓い眠りについた。
この時の自分は、抱き合った夜の事を目を覚ました彼女が全く覚えていないことなど知るよしもなかった。