約束のエンゲージリング
「〜っ、、!」
彼が部屋からいなくなってから布団を顔まで被って、叫びたくなる衝動を必死に抑える。
彼が私を好きだと言ってくれた。
まるで夢のような現実に叫ばずにはいられない衝動に駆られてしまう。
ずっと彼の恋人になる事を夢見ていた。
でも実際は15歳差という年齢の壁、兄の親友である彼と兄妹のように育ってきた私にとっては叶うはずのない夢。
それがこんな形で叶うなんて思っても見なかった。
結局、彼が部屋に戻ってくるまでドキドキとした胸の締め付けは収まらず眠る事は出来なかった。
気づけば旅館を出なければいけない時刻になっていて、2人で慌てて荷物をまとめて泊まっていた離れから飛び出した。
離れから本館に向かう時は手と腰を引かれ、よたよたと足腰の立たない私を庇うように引っ張っていってくれる彼。
そんな彼の優しさだったが、すれ違う人達がこちらに視線を向けるたび気恥ずかしさが勝って俯きながら通り過ぎる。
『、、千佳?体調悪い?』
そんな私の態度を不審に思ったのか、突然立ち止まり顔を覗き込むように腰を折りながら頬を撫でる。
彼の全て行動が兎に角甘い。