約束のエンゲージリング



すると更に視線が集まり、あちらこちらからボソボソと話し声が聞こえる。

内容までは聞こえないがこれ以上注目を浴びたくなくて彼から距離を取るように後ろへ一歩下がる。








「マ、マサさん!凄い見られてるよっ、、!私なら大丈夫だから先にフロントに行ってて、、?ゆっくり行くから、、ね?」

『、、そんなの駄目に決まってるでしょ。言っておくけどこの視線、千佳に向いてるものだからね。それを分かってて一人歩きさせる訳ないから。本当は抱きかかえて行きたいのを必死で我慢してるんだから千佳もこれくらい我慢しなさい。それとも、、公衆の面前で担がれたい?』








怖いくらいニッコリと笑う彼は冗談を言っているようには到底みえなくて必死に顔を左右に振る。


すると今度は満足したように笑って一度頭を撫でてから、また強く腰を引いて歩き始めた。







相変わらず視線は痛いけれども担がれるよりはマシだ。


そのまま寄り添うように本館のフロントへと辿り着き、手続きをしてから温泉旅館を後にした。








車に乗り込むまで彼は私から離れようとせず、助手席に乗ってようやく解放された。

彼と密着している間はずっとドキドキしっぱなしで解放されると同時に呼吸も楽になった。



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