約束のエンゲージリング
『この時間からなら着くのは夜になると思うから帰りは寄り道せずに帰るよ。千佳はゆっくりお休み。』
「え?でもそんな事したらマサさんがキツイよ。折角温泉で癒されたのにまた疲れちゃう。」
『俺は千佳に十分癒してもらったから。それに運転は好きだからね。』
優しく微笑んでからハンドルを持っていない方の手で私の手にそっと重ねる彼。
そのまま顔が近づいてきて重なる唇。
直ぐに離れてしまう彼だったが、目を開けて彼の横顔を見るとあまりにも幸せそうで涙が出そうになった。
彼が私を好きだと言ってくれた事はあくまでも罪滅ぼしだと思っている。
でも、、少しだけ期待してもいいのだろうか。
目を閉じて重ねられた手に遠慮気味に指を絡める。
罪滅ぼしだけじゃないんだって思ってもいい?
彼の最愛の人にはなれなくても、頑張ればその次くらいにはなれるかな。
怖くて指先が震えてしまう。
目を開けて彼がどんな表情をしているのか見る勇気はなかったが、指先が優しく絡みとられて心が温かくなった。
そのまま、その温かさに満たされて静かに眠りについたのだった。