約束のエンゲージリング
心の準備もできないまま、兄が玄関の扉を開けた。
『ただいま。今、旅行から戻ったよ。』
「思ったよりも早かったな。」
兄は私と彼を交互に見て、それから視線が下の方に向かった。
視線の先は繋がれた手。
暫くその手を見つめて、ゆっくりと視線を戻した。
『、、で?その様子だと俺の勝ちでいいって事だよな。』
「あ、あのねっ、、これには深い訳があっ『千佳の事が好きだ。それをこの旅行でマザマザと思い知らされた。約束通り、、引っ越しは認めるよ。でも俺らが恋人同士になる事は認めて欲しい。」
意味深な事を呟く兄に慌てて弁解しようと声を上げたが、彼の力強い言葉に被せられた。
そして更に握られた手に力が込められた。
真っ直ぐに兄を見つめて深々と頭を下げた彼。
暫く無言でその姿を見つめ、大きくため息をついた兄。
何を言われるか不安に襲われ、目を固く瞑るが聞こえてきたのは意外するぎる言葉。
「認めるもなにもそんな必要ないだろ。、、ずっとこうなる事を願ってた。荒治療になったが良かった。マサ、、これからも千佳を頼む。少し幼いところもあるが、そこは大目にみてやってくれ。」