約束のエンゲージリング
驚いて目を開けると、呆れながらもとても優しい表情をしていて胸が熱くなった。
『、、ありがとう。』
隣の彼は未だに頭を下げたままで、小さく呟いた言葉に更に胸が熱く締め付けられ涙が滲む。
「ったく、、マサ、いい加減に顔上げろよ。、、千佳も心配してる。」
兄の言葉にようやく顔を上げ、慌ててこちらに視線を向ける。
するとこぼれ落ちた涙に素早く彼の手が伸びてきて頬を優しく触れる。
『泣かせてごめん、、。でも千佳の事、本当に大事なんだ。千佳は昔からなんでも我慢する癖があるから心配なんだよ。これからは何でも溜め込まずに言葉にして欲しい。』
「うん、、。マサさんも、、ね?」
『、、あぁ。』
キツく抱きしめられて、その背中に初めて手を回す。
彼とこうして抱き合っているのが夢みたいで、その夢みたいな現実を噛みしめるように長い時間抱き合っていると咳払いが聞こえた。
何事かとそちらに視線を向けると気まずそうに頭を掻きながら玄関先に立つ兄と、目を見開いて驚いている沙羅姉の姿。
弾かれるように彼から離れるが、時既に遅し。