約束のエンゲージリング
照れた表情を浮かべる彼に沙羅姉が呟く。
「、、マサくんって溺愛系なんだね。」
「何言ってんだ、沙羅。マサは昔から千佳にはそうだろ。今までこうならなかったのが不思議なくらいだ。取り敢えず、マサの言い分は分かった。引っ越しの件は進めておく。今日は旅行疲れもあるだろうからもう帰れよ。明日も仕事だろ?」
『そうだね。2人に報告もできたし、今日の所は帰るよ。千佳も早く休ませてあげたいから。引っ越しが決まったら休みを調整するから連絡もらってもいいかな?』
「あぁ、連絡する。じゃあ気をつけて帰れよ。」
「マサくん、千佳!またねっ。」
私は蚊帳の外で3人の会話を聞いているだけだった。
それでも自然とつられて笑顔になる。
何故ならば3人がとても嬉しそうだったから。
手を固く繋ぎ直して2人に言葉を掛けた。
「、、ありがと。また来るねっ!!」
隣の彼も〝じゃあまた〟と声を掛けてから2人で背を向け、兄の自宅を後にした。
そのまま歩いて数分のアパートに辿り着き、部屋の前まで送ってくれる彼。
離れがたい気持ちを押し殺して呟く。
「えっと、、送ってくれてありがと。」