約束のエンゲージリング
『本当は可愛い千佳をこのまま帰したくないんだけど、、流石に明日の仕事にも支障がでるといけないから今日はここで帰るよ。孝にも沙羅ちゃんにも報告できたし、今日はそれで満足だから。』
恋人の特権なのか、惜しげも無く甘いセリフを振りまいてくる彼にクラクラしながらも小さく頷く。
『、、じゃあおやすみ。』
微笑んだ後、優しくキスをしてから背を向け去っていく彼。
何度か振り返り、その度に手を上げてくれる彼の後ろ姿を見えなくなるまで見送り部屋に戻った。
部屋についた瞬間、身体の力が抜けてその場に座り込んでしまった。
この2日間で色んなことがあり過ぎて、心身ともにキャパオーバーを起こしたみたいだ。
「本当に、、私、マサさんと恋人同士になれたの、、?」
こうなったキッカケである昨晩の事を覚えていない私にとっては未だに信じられなくて、でも彼は私を大事だと言ってくれた。
好きだと言ってくれた。
それが本当に恋愛感情としての好きなのかは彼にしか分からない事。
だからどんなに考えても分かる事はない。
それでも私の唯一の肉親である兄にワザワザ報告に行くくらいだから軽い気持ちではない筈。
彼のその優しさを真摯に受け止め、今は彼の事だけを信じていようと心に誓う。
旅館からの帰り道、あんなに眠ったのにまた睡魔が襲ってきて慌ててベットに横になる。
その日は結局、旅行の荷物を片付ける事なくすぐに眠りについたのだった。