約束のエンゲージリング
その言葉に甘え片付けを彼にお願いして、急いでロッカーにエプロンを掛けた。
そして鞄を肩に掛けて作業場に戻ると既に綺麗に片付けられていて出入り口の方で待っている彼を見つけた。
慌てて彼に駆け寄るとそれに気づいた彼が嬉しそうに微笑んでくれる。
『今日も一日お疲れ様。じゃあ帰ろうか。』
それだけでこんなにも胸が高鳴って幸せな気持ちになるなんて片想いしている時は知らなかった。
戸締りと警備をして外に出ると直ぐに繋がれる手。
片想いしていた時はモヤモヤした気持ちで彼の隣を歩いていたこの帰り道が今ではただ幸せであっという間についてしまうこの距離がもどかしい。
明日が引っ越しの為、今日は兄の家に泊まる事になっているのを既に知っているようでアパートを通り過ぎていく。
そんな彼に昼間に気になった事を聞いてみる。
「ねぇマサさん。今日来店した店の近くの会社にお勤めの男性のお客様だけど、、あんな事言って大丈夫だったの、、?マサさんファンが減っちゃったらお客様も減っちゃわない?」
すると真剣な表情でこちらを真っ直ぐと見つめる彼。
『嘘ついても仕方ないでしょ?それに千佳にもこれ以上言い寄られるのも良い気分じゃないからね。千佳は全く気付いてないみたいだったけどあの人、完全に千佳目当てだったから。、、それとも言わない方が良かった?』