約束のエンゲージリング
だからそれ以上のことなんて望まない。
望んじゃいけない。
「あの、、すみません。」
急に声を掛けられ、ボンヤリとしていた事に気付き慌てて声を上げる。
「すみませんっ!ボンヤリしていてっ、、!いらっしゃいませっ。」
「いいえ〜。ふふっ、その花束とっても素敵ですね?」
目の前には綺麗な女性のお客様。
あまりにも綺麗に優しく微笑むものだから同性の私でも見惚れてしまう。
年齢は30代くらいだろうか。
こんな風に素敵な大人になれたらずっと彼の側に居られるのだろうか。
あれ、、でも何だろう、、、何処と無く私に、、。
「貴方ここのスタッフさん?なんだか私達、、顔似てますね?もしかして遠い親戚とかですかね?」
そう思ったのは私だけではなかったらしく、綺麗な女性は少し困ったように笑った。
確かに私も一瞬そう思ったが、よく見たら私とは違って洗礼された大人の女性という感じだ。
「それはそうと、、ここはあんまり変わってないなぁ〜。外装が少し違ったからビックリしてつい入っちゃったけど中はあの頃のままだ。」
店の中を一周見渡してから懐かしそうに呟いた女性。
その表情は少し寂しそうでどうしても気になってしまう。
「外装は5年ほど前に新しくしたので、、もしかしてこの辺にお住まいだったんですか?」
「ええ、、随分と昔に。この店は私の心の拠り所だったから。ちなみに経営者の方って変わらずですか?」
「はい。店長は牧野正巳さんですよ。もしかしてマサ、、店長とお知り合いですか?」