約束のエンゲージリング
「それであの人はなんて?」
『あれから直ぐに旦那さんとは別れたらしい。数年前にこっちに戻ってきてたらしくて、この街を離れる前にどうしても真実が知りたかったって。気持ちを正直に打ち明けて謝って、、そしたらスッキリしたように笑顔で別れを告げられたよ。』
「和解したなら良かったんじゃないか?あの人、悪い人じゃなかったからな。それで?お前はどうしたい?その感じだと千佳のやつ完全に誤解してるだろ。そんな千佳に会っても誤解が解けるか定かじゃない。そうなれば傷は深まる一方だ。」
『そう、、かもしれないけど、このままって訳にはいかないよ。今日中に会って話をしないと2、3日千佳とは会えない。』
「それって仕事関係か?」
『市場の組合員として会合にでなきゃいけないんだ。いつもは都内なのに今回は沖縄であるらしくて生産者さんとの交流会とハウスの視察も含まれてるから泊まりがけで。』
「なら丁度いいな。これを機会に一旦、距離を置いてみたらどうだ?お前達、何だかんだで離れたことなかっただろ?一度姿が見えない所で冷静に考えてみるといい。そうしたら自然と答えが見えてくると思うけどな。」
親友のありがたい助言だったが、そんな事をすれば関係が悪化するのは避けられない。
そう思い黙り込んでいると孝の口から盛大なため息が漏れた。
「どのみちお前じゃ千佳とは連絡取れないだろ?お前の出張の件とその間の店番だけは伝えておく。それでいいか?今回の件、間に入ってやれん事はないがこういう話は第三者が立ち入らない方がいい問題だ。あいつと連絡が取れたらちゃんと連絡するから、今日の所は一先ず帰れ。」