約束のエンゲージリング


彼の名前にカーソルを合わせて発信ボタンを押そうとするが押せずに躊躇していると、携帯が震えて着信を知らせる音が鳴り響く。


着信の相手は兄で、滅多に掛かってくることのない相手なだけに緊急なのではと思い直ぐに通話ボタンを押した。










「もしもし孝兄、、?何かあった?!」

「それはこっちの台詞だろ、、、。今どこに居る?マサが心配してる。」

「っ、、隣にマサさん居たりする、、?」

「いや、さっきまで来てたけど帰した。お前と連絡が取れない上に何処にもいないと血相変えて来たぞ。マサには言わねぇから、、取り敢えず今いる場所言え。」

「、、、ビジネスホテルに泊まってる。その、、仕事中に急に体調が悪くなっちゃって、、マサさん、丁度お客様来てたから何も言わずに店出て来ちゃって、、っごめんなさい。孝兄にも心配かけて本当にごめんなさい。」

「はぁぁ、、、それで具合は?」

「あ、うん、、少し眠ったら大分いい。今日早めに休めば明日からは普通に出勤できそう。」

「マサは明日から泊まりがけで2、3日沖縄にいくらしい。なんでも総会に出るらしいが、、お前はどうする?店を閉めて休んでもいいとは思うが。」

「み、店番する!迷惑かけた分、しっかり店番するよ。、、そう伝えてくれる?」







彼が兄の家を訪ねたのならきっと私が逃げた理由も知っているに違いない。

ここは一旦、距離をおいて彼が戻ってくるまでに気持ちを整理しよう。




そして次会うときは〝妹〟として迎えよう。

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