約束のエンゲージリング
結局、彼の事ばかり考えた1日が終わり気づけば外が真っ暗になっていて店仕舞いを始めた。
1人で片付けるとそれなりに時間が掛かってしまって戸締りをして外を出る頃には真っ暗だ。
ぼんやりしながら暗い夜道に向かって一歩足を踏み出すと、背後から肩を叩かれた。
恐怖で全身に力が入り、振り向けずにいると突然名前を呼ばれる。
「千佳、、俺だ。」
よく知ったその声にホッとして振り返る。
「孝兄っ!もう〜、、びっくりした!!どうしたの?今仕事終わり?」
「まぁそんなとこだ。」
「あ、私がサボってないか見に来たんでしょ〜?ちゃんと店番してたよ。お客様も比較的に少なかったから大丈夫だったから。」
「ならいいが、、じゃあ帰るぞ。」
「うん。じゃあね。」
スタスタと歩いて帰って行く兄の背中を見送っていると、途中で兄が振り返りため息を吐く。
「お前も一緒にだ。どいつとこいつも過保護で困る。2人とも夜は危ないから迎えに行けって煩い。幼い子供じゃあるまいしな。」
「え?2人って沙羅姉とマサさん、、?」
「あぁ。それと明日使う大事な資料を忘れてきたから写メで送ってくれだそうだ。お前、合鍵渡されてるんだろ?俺は持ってないから入れない。」