約束のエンゲージリング
「うん、持ってる。大事な資料なら大変だね!早く行こう。」
理由を聞くと彼の一大事に自然と早足になる。
兄と無言で彼のアパートに向かう。
そういえば兄と歩いて帰るの、、子供の頃以来だなっと懐かしく思う。
社会人になってからは彼が欠かさず送ってるくれてた。
そう思ったら、なんて贅沢な日々だったのだろうとしみじみと感じる。
彼のアパートにつき、キーケースから彼の部屋の鍵を取り出しドアを開ける。
中に入ろうかと躊躇していると兄から入るように促される。
「まず探す所から始めるから時間がかかる。お前はその辺に座って待っとけよ。用事を済ませたらそのまま一緒に帰るぞ。沙羅がお前の分の晩飯も作って待ってるからな。」
「、、いいの?じゃあお言葉に甘えようかな。」
私の返事を聞くと兄はそのまま奥の部屋へと消えて行った。
まだ数えるくらいしか来たことのない彼の部屋。
取り敢えずウロウロするのもどうかと思い、近くにあるソファーに腰を下ろした。
身体を預けた瞬間、フワッと彼の香りがして思わず立ち上がる。
たった1日会えないだけでこんなにも敏感に反応してしまう自分が情けない。