約束のエンゲージリング
こんなに彼の香りに包まれるソファーに座ったら、また彼が恋しくなってしまう。
離してあげられなくなる。
座ろうか迷っていると、ふと目線の先にキラリと光るモノを見つけた。
なんだろうと近づくと、それをハッキリ見た瞬間ドクンと心臓が大きく光る脈打つ。
「、、これって、、、エンゲージ、、リング、、、?」
小さな箱の横にリングケースが開いた状態で置いてあるそれを見て、思わず呟く。
真ん中には大きく輝きを放つダイヤにそのダイヤの両隣に小さいダイヤが付いたデザインの指輪。
ただのファッションリングではないのは、その高級感のあるリングケースを見ただけでも明らかで急に激しい動悸に襲われ呼吸がうまく出来ない。
それでも恐る恐るそれを手に取る。
リングケースへの刺さりが甘かったのか持ち上げた反動でリングが音を立てて床へと転がる。
慌ててそれを拾うとリングの内側にある文字があるのを見つけた。
〝M to C〟
「千佳、終わったから帰るぞ。」
その文字を見つけ目を見開いた時、背後から兄に声を掛けられ咄嗟に指輪をケースに仕舞ってそのままポケットに入れる。
「っ、、や、やっぱり少し体調が悪いからお邪魔するのは遠慮しておく。沙羅姉には謝っておいて?」