約束のエンゲージリング
確信的なその言葉に心臓が脈打つ。
そのヒトが〝誰を〟指しているかなんて分かっている。
ゆっくりと顔を上げると、真剣な表情をした女性と目が合う。
そのまま目を逸らさず、広角を上げて言葉を返した。
「はい、知ってます。、、ご心配されなくても今日、彼とはお別れするつもりです。彼の幸せを願えばこうするのが一番だって分かってますから。」
「そう、、やっぱり貴方も気づいていたのね。私もね、彼を失うのが怖くて気づかないフリをしていたの。、、彼と出会った頃は、新婚だというのに私を置いて赴任してしまったあの人を恨んでた。独りが寂しくて、優しく接してくれた彼に手を伸ばした。いけない事だと分かっていたわ。でも彼の優しさに触れる度、寂しかった心が噓みたい温かくなって、気づけば私は彼をあの人以上に愛してしまった。だから気づいたの。彼が想い続けている女性の存在を。その事に気付いてしまったら最後。もう彼の側にいるのが辛くてなって、彼の事を試すような事をして深く傷つけた。」
「試す?何故わざわざそんな事を、、?そんな事をしなくてもマサさんは貴方の事っ、、!」
その先の言葉が何故だか続かない。
そんな私の様子を見た女性は、悲しそうに笑った。
「だって私ばっかり好きで悔しいじゃない?せめて最後くらい私を見て欲しかったんだもの。だから赴任中の夫を呼びつけて、夫に抱かれる姿をワザと見せつけて、、っ、、!?」