約束のエンゲージリング


営業時間を終え、静まり返った店に響いた〝パンッ〟という音。






人の頬を叩くなんてそんな事、生まれて初めてで女性の叩かれた頬は赤くなり叩いた私の手はジンジンと傷みが広がる。


でもきっとそんな私達の痛みなんかよりも、その裏切り行為を目撃した彼の痛みは想像出来るものではなくて、、そんな彼を想うとボロボロと涙が溢れる。







「どうしてそんな酷いこと出来たんですかっ、、、?そんな事しなくても貴方は愛されてた!!!マサさんは貴方と結婚を考えていて、指輪まで準備してたんですっ!!それなのにっ、、そんなのあんまりじゃないですかっ、、!」




泣きながら叫ぶ私を唖然とした様子で見ている女性に掴み掛かりながら更に叫んだ。









「さっきから黙って聞いてれば何を言ってるんですか?!マサさんが想い続けているヒトなんて、、貴方に決まってるじゃないですか!!どうしてそんな事も気づかなかったんですか!?!?マサさん、貴方と別れてからずっと貴方を想ってきたんです!!だから渡す事が出来なかった指輪だって未だにずっと持ってた!!!」

「ま、待って?落ち着いて?指輪って何のこと、、?」

「貴方に渡すために買っていたエンゲージリングですよ!!なんならお見せしましょうか?!私、今それを持ってますから!!」



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