約束のエンゲージリング
そんな2人を眺めていると、いつのまにかモールに到着していた。
「じゃあ、行ってきまーす!ほら、千佳行くよ!!!」
「う、うん!孝兄送ってくれてありがと!」
車から飛び出し、また私の手を引いて駆け出す沙羅姉に背後から低い声が響く。
「沙羅、、走るな。」
「は、はーい。」
苦笑いを浮かべ舌を出して振り返る沙羅姉に、呆れたようにため息をついてから手を上げモールから走り出していった。
2人で車を見送ってから、ようやく車が見えなくなってから顔を見合わせて笑った。
「孝ってば!ほーんと口煩いんだから!私のお母さんかって!!兎も角あんまり時間ないし、急ごう?」
「うん!」
沙羅姉おススメの店を見て回った。
センスの良い沙羅姉にお任せでトータルコーディネートして貰った。
選んで貰った服を着てフィッティングルームから顔を覗かせると、それに気づいた沙羅姉がカーテンを開ける。
「ど、どうかな?ちょっと大人っぽいかな。背伸びしてる感じに見えない?」
「ううん!凄い似合ってるよっ!!千佳ももう25歳だもん!これくらいが丁度いい。」
姉の欲目というやつじゃないだろうかと心配になって、もう一度鏡を見る。
普段はパンツスタイルが多いが、鏡に映る自分が着ているのは綺麗な色味のプリーツスカートで裾の方に少しスリットが入っている。
それを細めのベルトでウエストのメリハリをしっかりとつけ、トップスはタイト目な薄手のニットでデコルテがザックリと空いたデザインのモノ。
それに薄手のロングトレンチコートを羽織って少しヒールの高い春らしいパンプスで大人シンプルにまとめたコーディネートだ。
確かにすらっと見えてスタイルは良く見えるが、普段と全く違う装いにソワソワしてしまう。