約束のエンゲージリング
彼の向かったであろう方を見つめながら小さく溜息をついて、今日の予約表の確認を始めた。
「さてとっ、、お誕生日のお任せアレンジが1つとお供え用のアレンジ、、それから送別用の花束が6つか、、、。あ、さっき電話注文の配達も受けたんだった。」
小さく呟いて花の入ったストッカーから花を取り出した。
ここは町の小さな花屋。
そして私は高校を卒業した18才からこの〝フラワーショップ牧野〟という花屋で働いている。
この店の元オーナーは彼の父親だが、息子である彼に全てを任せ、夫婦で離島に移り住んでしまった。
最後にお会いしたのは久しぶりに遊びに帰ってきた5年前くらいだ。
だから今やこの店〝フラワーショップ牧野〟はオーナー兼店長である彼の店なのだ。
彼の名前は牧野 正巳(まきの まさみ)
現在39歳。
長身に少し目尻の垂れた二重に優しい顔つきで常に柔らかい雰囲気を醸している所謂〝イケメン〟で、今年で40歳には到底見えない。
それなのに独身となれば、女が放っておかない。
店には彼目当ての女性客が多く、彼が店を父親から引き継いでから売り上げが物凄い勢いで伸びたのだとか。
だから花屋である事もあり客層は、女性が圧倒的に多く目を離すと直ぐに言い寄られていて困ってしまう。