約束のエンゲージリング
置いていかれ不安になっていると、少し行った所で彼は振り返ってこちらに手を差し伸べた。
『おいで千佳。、、おいていっちゃうよ?』
優しい顔で私を呼んでくれる彼に胸がキュッと締め付けられる。
一歩足を踏み出そうとした時、隣を通っている2人組の女性の話し声が聞こえた。
「ねね!あの入り口に立ってる人、かっこ良くない!?もしかして一人かな?声掛けてみる?」
その女性達の視線を追うと、そこには大好きな彼の姿。
そこで躊躇していた気持ちが一瞬で吹き飛んで彼に勢いよく駆け寄る。
そして両手で差し出してくれていた手を掴む。
「こんな広いと迷子になっちゃうよ!っだから!今日は手、、、繋いでてもいい、、?」
大胆な言葉も今日なら許される気がして、彼に聞こえるか聞こえないか位の小さな声で呟く。
するとギュッと優しく握り返してくれる彼。
顔を上げると目を細めて切ない表情をしている彼と目が合う。
『勿論、そのつもりだよ。迷子が心配な訳じゃないけどね。じゃあ行こうか?』
「あ、ありがとっ、、!って迷子予防じゃなくて?じゃあなんで、、、?」