約束のエンゲージリング
手を伸ばしてきた彼から逃げるように車の外に飛び出した。
優しい彼のことだもの。
もしかしたら〝同情〟で側にいてくれようとするかもしれない。
それこそ惨めだ。
彼の本命にはなれない。
私は彼にとって、あくまでも妹なのだから。
同情ではなくて、彼の望む妹として今まで通り過ごしていきたい。
私の後を追いかけるように車から出てきた彼。
少し焦ったような表情の彼に、思わず駆け寄って抱きつく。
『っ千佳っ、、!?』
「心配しなくても仕事辞めたりしないよ?これからもマサさんの妹としてずっと側にいる。勿論今まで通り、、とはいかないこともあるけど普通に接して欲しいよ。」
そう言って側を離れた。
せめて最後は貴方が好きだと言ってくれた笑顔で妹に戻らせて、、、?
大きく深呼吸して声を上げた。
『、、、っマサ兄大好きっ、、!最高な25歳の誕生日だったよ!!プレゼントも沢山ありがとう!!!このピアスも明日から毎日着けるね!今日は本当にありがとう。じゃあ、、おやすみなさい!』
歯を見せて笑いかけて、それから手を振ってから背を向けた。
彼からの返事は待たずに、急いで階段を駆け上がり部屋へ飛び込んだ。